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恋花火***side story
第22章 サマーラブ
「茜とあの一年って付き合ってんの?」


俺と茜は高校では偽装交際をアピールしていたので、当然周囲にはそう聞かれる。


「や、わかんない」


誤魔化してるとかじゃなく本当にわからない。


なにがどうしてこうなっているのか。


タケルと茜がどこどこで二人でいたとか、手を繋いでいたとか


…キスをしていたとか


あまりにも目撃情報が多い。


火のないところに煙は立たないというが、まさにその通りなのかも。


茜とはあの日以来全く話さなくなった。


それもまた、噂を加速させる要因のひとつではあったと思う。









夏休みが明けてからはまた、実家から通学した。


久しぶりの始発。


なんとその電車には、菜月ちゃんが乗っていた。


たまに一緒になることはあったけど、それは郁の家の最寄り駅から乗るときだけ。


いつのまに始発に変えたんだろう?


同じ部の仲間なんだから、普通に話しかけることだって出来た。


だけど俺は声をかけることが出来なかった。


…なぜなら


菜月ちゃんは電車の窓から、それは寂しそうに海を眺めていたから……。



今まではタケルと二人で登校していたのに。


仲良く手を繋いで、まるで恋人みたいに


いや、それ以上の二人をよく見かけていたから。


今菜月ちゃんがこうして一人でいるのも


すごく悲しそうな顔をしているのも


きっと


いや、絶対


茜のせいだと思った。
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