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恋花火***side story
第29章 KOAKUMA
菜月は俺にとって、運気上昇のマスコット的存在でもあったのかもしれない。


なぜかというと


菜月のことを手放そうって決心したこの頃から


身の回りでは徐々に変化が起き始めた。


前もそうだった。


菜月が隣にいなくなった瞬間に嫌がらせが始まったりする。





「君がタケルくん?」


とある日


鬼練を終えて帰宅すると、家の前でそう声をかけられた。


ベージュのニットに黒パンっていう、ラフな格好をした男がそこにいた。


「…これ、君のお母さんが忘れて行ったんだ。無いと困ると思って届けに来たんだけど、留守みたいだったから。渡しておいてくれるかな?」

「あぁ、いいっすよ。」


受け取ったのはポーチだった。


持つとカチャッと音がして、中は化粧品だろうなと思った。


だってこういうの菜月も持ってるし。


まぁ菜月は元が可愛いから、少しだけ頬に色つけたり、唇テカらす程度なんだけど。


その男は俺にそれを手渡すと、さっさと帰って行った。


なんでかこの時は気付かなかったけど


どう考えたっておかしい。


なんで男が母親の化粧ポーチ持ってんの?って。


後にわかる。


そいつは母親の恋人で


一緒にいるときに化粧を直したりすることしてんだなってこと。


そういえば去年の暮れにも、ラブホ街で母親を見かけたこともあった。


……吐き気がするよ。


ありえない。


汚い。


俺だって菜月とそういう事するけど


同じ行為だとは到底思えなかった。


気持ち悪い


それは想像でしかないけれど。


母親のそれは、想像すらもしたくないと思った。
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