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恋花火***side story
第37章 あの頃この頃*Riku
「…で?」

「ん?」


どこから話を繋げたのか、茜はぶっきらぼうに会話を振ってきた。


「どうだったの?」

「なにが?」

「…エリカさんと再会して、どうだったの?」

「どうってなんもないけど。」

「そ。」


何が言いたいのか全く伝わらないが、茜は少し不機嫌そうな声を出してきた。


「あんなに好きだったのにね…」

「あー、まぁ。でも今は…」

「菜月ちゃんがいるもんね、陸には。」


被せるように言われて、なんとなく嫌味に聞こえる。


「…何が言いたいわけ?」

「別になにも。」


奥歯に物が挟まったような、なんともサッパリしない気分。やはり今日の茜は機嫌が悪いみたいだから、そろそろ電話を終わらせようかと悩んでいると「陸ー」と、部屋に郁がやって来た。


「なんだよいきなり。」

「今日泊めて。」

「いいけど。」


今日はなんとなく人肌恋しい夜だし…って、郁がそれを満たす訳ではないが、一人でいるよりはいいと思えた。


「…郁さん?」


茜がそう呟き、そうだよと返事をするかしないかってところで、電話はプツリと切られた。


「あれ?電話いいの?」

「なんか切れた。」

「彼女?」


そう郁に問いかけられ、茜だと言いかけ、慌ててそれを飲み込む。


そうしたのには、茜と郁の間に亀裂が生じていることを思い出したからで、深い意味はない。


だけどこれは、俺の昔からの悪い癖。


気になることがあるのに肝心なところから目をそむけ、知らないふりをする。


そうしているうちに上手くやり過ごすという、卑怯な自分。


人と真剣に向き合ったことなんか、もしかしたら今までなかったかもしれない。


…いや、一度だけあった。


昔、家族がバラバラになりかけた時に、父さんと向き合って話したことがあった。


あれは、茜のおかげだったということも同時に思い出した。
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