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恋花火***side story
第38章 真実*Riku
どれくらいボーッとしていたのかわからないけれど


ふと人の気配がして顔をあげると、郁がそこに立っていた。


「……郁」


郁はスッと俺の隣に座り、胸ぐらを力任せに掴んできた。


そしてそのまま一発、拳が左頬目掛け飛んできた。


一瞬にして、口の中に鉄の味が広がる。


なにすんだよ!


そう思ったが、頭が真っ白でなにも言えぬまま郁の顔を見た。


「……馬鹿か、おまえは」


郁は小さくそう呟き、胸ぐらを掴んでいた手を緩めた。


「そんなおまえに、菜月ちゃんが振り向く訳がねーんだよ。」


……そんな事


言われなくてもわかってる


何回言えば気が済むんだよ


「……茜の気持ちに気付いてやれよ」


一言残し


郁もまた、目の前からいなくなった。






……どういうこと


ねぇ、どういうこと?


郁と茜は喧嘩してたんじゃないの?


もしかして郁は俺の知らない茜を知っている?


俺だけが一人、何も知らない


……いや、知らないんじゃない


知ろうとしなかったんだ_____
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