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恋花火***side story
第39章 大都会*Takeru
新幹線は、東京駅に着いた。


ホームから階段を降りると、そこは人で溢れていた。


あまりの人の多さに、方向性を見失いたじろぐ。


けれどこんな俺のことを誰一人として気にしていない。


それに、こんなにも人がいるのに、誰も俺のことを知らない。


今の俺にとっては、それが心地いい温度と距離だった。












その脚で、俺はそのままとある場所へ向かう。


駅構内にあるレストラン。


別に腹を満たす訳にそこに行った訳ではない。


待ち合わせのために。







「大石くん」


既に待ち合わせの人物はそこにいた。


白髪が少し混じり、笑うと目の横にくっきりと笑い皺が浮かぶ初老の男性。


なんとなく菜月のジジイに似てる雰囲気だと思った。


その男性の正体は、これから俺の雇い主となる人物。


「部屋は1K。小さな流し台はある。風呂とトイレは共同になるから」

「わかりました。……色々と、ありがとうございます」


俺は東京での生活費と、脚の治療費を稼ぐ為に仕事を見つけた。


もう稼げるのならなんでもいいと選んだ仕事は道路工事。


作業上、夏は灼熱地獄の如く暑く、冬は手足が凍てつくほどに寒いと聞いた。


18歳だと偽るのは無理があると考え、16だと名乗った。


当然、親は、家族はどうしたのかと聞かれる。


親はいないと言った。

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