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恋花火***side story
第39章 大都会*Takeru
部屋へ戻り、病院の領収書を見てから、それをグシャグシャに丸めて捨てた。


どうにか気分転換をしたいけれど、携帯電話の充電器を家に忘れてきた。いや、家じゃない。悪魔の棲む家に忘れて来た。


電源を入れたところで、落胆するだけだから携帯電話はいらない。


充電器がなくてちょうどよかったのかも、と思った。


共同の風呂は、あまりに不潔そうで、そこのドアは2度と開けることはないだろうと思った。


近所に銭湯が何箇所もあったので、億劫でも毎日通った方がいいと思えた。










「おまえ、歳いくつ」


銭湯から戻り、部屋の鍵を開けドアノブを回したところで、背後からそう声をかけられた。


振り返ると、この薄暗い廊下には不釣り合いなくらい、明るい髪色をした少年が立っていた。


実際年齢、少年という表現が合っているのかはわからない。初対面なのだから。


けれども、成人してる風には到底見えないそいつを俺は見た。


「……16」


偽りなく答えると、そいつはニッと笑い、数本かけた歯が目立つなと思った。


「16、だったら院から来たのかー」

「……院?」

「少年院」


迷うことなくそう言われ、呆気に取られた。


「何やったん?俺は窃盗。そんときに人切っちゃって」


窃盗?人を、切る?


「おまえはアレだろ、恐喝とか、暴行とか。それっぽい」


なんて遠慮のない奴なんだと、驚いた。


初対面なのに、そこまで言い切れるとは。


「……別に犯罪は犯してない」


そう言うとそいつは、意外だという目で、俺を見ている。


……いや。


本当は俺は、罪を犯している。


捕まらなかっただけで、何度も人を殴ったこともある。


窓だって割ったし、テレビだって壊した。


そして一番の罪は


この世に産まれてきたこと_____






「俺は隣の部屋の西条。苗字はなんか、かっけぇだろ。おまえと同じ16。よろしくな」


西条は再び、かけた歯を剥き出して笑い、握手を求めてきた。


差し出されたその手に、躊躇することもなく、俺は自分の手を重ねた。


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