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恋花火***side story
第39章 大都会*Takeru
隣の部屋の西条とは、それから毎日言葉を交わす仲となった。
この建物は壁が薄い。時折隣からは"あの時"特有の女の声が聞こえてきた。けれど何とも思わなかった。
母親の女の声と言うものはあれほど不快だったけれど。
そして俺は、西条と仲良くなってから、久しぶりに腹を抱えて笑った。
隣からよく聞こえてきていたその声は、実はテレビから流れるものだということがわかって。
「女?そんなんいねぇーし!」
ケラケラと笑う西条は、やはり自分と同じ歳なのだと思った。
明るい髪色と、堂々とした出で立ちから、なんとなく歳上ぽい容姿だと思っていたけれど。笑い顔は16歳だったし。歯が欠けていて、間抜けだと思った。
「おまえは?女いるの?」
「いない」
「今まで付き合ったことは?」
そう聞かれて、答えに迷う。
頭に浮かんだのは
そう、あの子の顔だけど。
俺たちは、付き合っていたのだろうか。
そもそも、付き合うってなんだよ?
何度も思い悩んだテーマが再び頭を駆け巡る。
きっと俺たちは、付き合ってはいなかった。
言葉もなかった。
ただの一度も。
「……ない」
そう答えると、西条は少し馬鹿にするような、小憎たらしい笑みを浮かべている。
「へぇ。じゃあ、これからちょっと、いいとこ行こうぜ」
そう言って、欠けた歯を堂々と見せつけながら腕を引いた。
薄暗い廊下から、明るいネオンの灯る街へと、俺を連れ出して。
この建物は壁が薄い。時折隣からは"あの時"特有の女の声が聞こえてきた。けれど何とも思わなかった。
母親の女の声と言うものはあれほど不快だったけれど。
そして俺は、西条と仲良くなってから、久しぶりに腹を抱えて笑った。
隣からよく聞こえてきていたその声は、実はテレビから流れるものだということがわかって。
「女?そんなんいねぇーし!」
ケラケラと笑う西条は、やはり自分と同じ歳なのだと思った。
明るい髪色と、堂々とした出で立ちから、なんとなく歳上ぽい容姿だと思っていたけれど。笑い顔は16歳だったし。歯が欠けていて、間抜けだと思った。
「おまえは?女いるの?」
「いない」
「今まで付き合ったことは?」
そう聞かれて、答えに迷う。
頭に浮かんだのは
そう、あの子の顔だけど。
俺たちは、付き合っていたのだろうか。
そもそも、付き合うってなんだよ?
何度も思い悩んだテーマが再び頭を駆け巡る。
きっと俺たちは、付き合ってはいなかった。
言葉もなかった。
ただの一度も。
「……ない」
そう答えると、西条は少し馬鹿にするような、小憎たらしい笑みを浮かべている。
「へぇ。じゃあ、これからちょっと、いいとこ行こうぜ」
そう言って、欠けた歯を堂々と見せつけながら腕を引いた。
薄暗い廊下から、明るいネオンの灯る街へと、俺を連れ出して。