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恋花火***side story
第8章 プレゼント
「陸!あんたお茶くらい出しなさいよ!」


立ちすくんでボーッとしてたら、母さんが帰ってきた。


「郁くん、疲れたでしょう。さぁ座って座って!」

「…郁?」


するとその人は自己紹介をしてくれた。


名前は郁。


昔父さんが、もしいつか子どもが生まれたら郁と名付けたい。


そう言っていたらしく


郁の母親はそれを覚えていて、そのまま付けたらしい。


「郁と陸?」

「そ。…名前似てるよな。」

「…うん。」


俺は嬉しかった。


母さんが郁を温かく迎え入れていること。


郁が父さんに良く似た表情で微笑んでいること。


俺たちはひとつ、でかい山を越えたんだと思った。







それから俺たちは、妙に仲良くなった。


郁は時々俺をからかい、寝てる間に顔に落書きしたり


バカみたいなイタズラをしてきた。


かと思えば、真剣に進路の相談にも乗ってくれたり。


「俺、兄が欲しかったんだよね。」


クリスマスの夜に、突然現れた郁。


それはサンタさんからのプレゼントだと思った。

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