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恋花火***side story
第9章 SAYONALOVE

「陸さっきからなに言ってんの?産めるわけないじゃん。」

「え…、だって」

「もうとっくにおなかにいないよ。」

「…嘘だろ?」

「こんなこと嘘つくわけないじゃん。」

「なんで!?」

「なんで?あの時あの場面見てなんも思わなかった?堕さない限りあたしはずっと殴られる。それこそ殺されるよ!」

「でも…産みたいって…」

「そんなの気の迷いだよ。」


ズキン


治ったはずの顔の傷が痛んだ


「もう二度と電話かけてこないで。」

「じゃあ会いに行く。」

「迷惑。」

「鍵だってあるし。」

「ストーカーみたい。怖いよ。」


エリカは一度も俺の目を見ない。


どこか遠くを見つめてる。


「…あたしのこと忘れて。」

「嫌だ!」

「あたしも忘れるからさ。」

「嫌だってば!無理だよ!」

「未練たらしい男は嫌われるよ?」

「嫌われてもいい!エリカといたいんだよ!」


エリカはついに俺に背を向けて歩き出した。


「行くなよ!」


俺の言葉になにも反応しないで歩くエリカの腕を掴む。


袖から覗いた手首には、青い痣があった。


それを急いでエリカは隠した。


「これ…あのときの?」

「もう陸には関係ないから。」

「関係ないってなんだよ!俺のせいだろ!俺が…俺がちゃんと避妊しなかったから、エリカも赤ちゃんも痛い思いさせて…」


情けないことに


言いながら目から涙がボロボロこぼれた。


「…まだまだ子どもじゃん。泣かないでよね。」


ださい


涙を拭っても、次から次へと溢れてくる。


「あんたはサッカーのことだけ考えてればいいの。わかった?」

「やだ…エリカ行かないで。」


女々しい


わかってるのに、エリカを引き止めたくてしょうがなかった


「ごめんね。ただの遊びだったんだ。」

「それでもいい!これからも…」

「無理だから。」


エリカは冷たく突き放した。


「じゃあね。もう追ってこないでよ。恥ずかしいから。」


言われて気付く、周囲の視線。


「エリカ!!」


大声で叫んだ。


けれどエリカは振り返らずに


俺の前から立ち去った。








…ストーカーって怒られるの覚悟でエリカのマンションを訪れた。


何度も愛し合ったその部屋は


空室になっていた。
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