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恋花火***side story
第11章 Takeru*海の声
一年前の運動会の日。


日付まで覚えてる。


6月14日 日曜日、天気晴れ時々曇り。


その年は俺の親が離婚したばかりだから、運動会には誰も来ないという話だった。


それまでは俺の親は両親揃って運動会に来てくれていた。


父親はビデオカメラを片手に、母親はバカでかいメガホンと、俺の好物ばかりがいっぱい詰まったお弁当を持って。


だけど今年は来ない。


母親は父親がいなくなってから、寝る間も惜しんで働いていたから


運動会に来てほしいだなんて、言えるはずがなかった。


弁当なんか当然あるはずない。


忙しい母親は、運動会の日付さえ覚えていない。


俺はそれに不満なんてなかったけど


一人で過ごす昼休みを思うと泣きたくなった。


案の定、昼休みはまるで地獄。


あっちこっちでレジャーシートを広げ、家族みんなで楽しそうにお弁当を食べるクラスメイト達の横で


一人で椅子に座り、持ってきた白飯を口に頬張った。


オニギリなんか作れない。


ただ白飯をラップで包んだだけのものだから、味もない。


食べているうちに泣きたくなってきた。


俺はこれから、こうして一人で何でもやっていかなくちゃいけない。


母親を頼ってはダメだ。


朝起きるのも、風呂のそうじも、なにもかも。


全て一人でやらなくちゃ。


考えていたら途方も無い気持ちになった。


両親の離婚というものは


まだ11歳の俺には


これ以上ないくらいの衝撃だったんだ…
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