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恋花火***side story
第14章 彼女と雪と涙
「寒い〜」

「タケルって寒がりだよね。」


携帯電話を買うという目的を果たした俺たちは、もう用はないのにブラブラと街を歩いた。


寒いから菜月と手を繋ごうと思ったのに、電話のショップの袋や、やたらでかい紙袋を菜月は持ってて、両手ふさがってる。


「なんか荷物多くね?持ってやるからよこして。」

「いや。」

「早く。手繋げねーじゃん。」

「…大切なものだから、あんまり乱暴に持たないでね?」

「たぶん。」

「絶対!」

「わかったって。」


どこの店からも聞こえてくるクリスマスソング。


あちこちに飾られているクリスマスツリーや、店頭で売られているクリスマスケーキ。


いつからか俺の家にはクリスマスツリーも飾られなくなったし、ケーキなんてものも出てこなくなった。


いつからかというか


両親が離婚してからなんだけど。


菜月んちはじいちゃんがそういうのが好きらしく、本物のもみの木にたくさんのオーナメントが飾られていて、それを見るのが俺の楽しみだった。


「ケーキ美味しそ〜」


思わずボソッと呟くと、


「甘いもの好きだよね。」


俺のことは何でも知ってる菜月が笑う。


「このあとどうする?」


何もなかったら、早く帰って菜月んちに行きたい。


クリスマスツリーも見たいしね。


そう伝えると菜月は、「ちょっと寄りたいとこがあるの。」だからまだ帰らないと言った。


「えーさみぃ〜」

「も〜。」


すると菜月は、そこらへんにあった店に入ろうって言った。


そこは、絶対中に女子しかいないでしょってくらい可愛らしい雑貨屋らしき店。


「…俺ここで待ってる。早く買い物済ませてきて。」

「わかった。」


こんなこっぱずかしい店に入れるかっつーの。


ふと辺りを見渡せば、俺と同じように女の買い物を待ってる男たちの姿があった。
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