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文句言いっこなしの三重奏
第6章 カノン
『じゃあな。』
『おう。』
間もなく、互いの家の中間地点に差し掛かり。僕らは手を挙げ、別れを告げた。
『…っと、勇祐。』
『ん…?』
背中を向けて、数歩。肩越しに振り返ると、真っ直ぐこちらを向いて立つ崇臣が見えた。
『総体、ガンバレよ。』
『うおっ…何でこのタイミングだよ?!』
最悪か!!せっかく忘れてた憂鬱を、ここで思い出させるなんて…マジ性悪め。
『アハハ…応援してるぜ!』
ポケットから出したグーの手を、僕に突き出して。明るく言う崇臣だけど、あれはどうせ、僕の不調に気づいているんだ。
崇臣は経験者。それも、僕より上級者だった奴だ。練習を見ていたなら、即バレる。調子の良し悪しや上手い下手、そんなのはすぐに見破られてしまうのに。
『コノヤロー…胃が痛くなったわ!』
『アハハ!お大事に〜』
やけくそで叫んだ僕を、愉快そうに笑って。崇臣は大きく手を振り、帰って行った。
あいつめ…どこまでも悪フザケしやがって…