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文句言いっこなしの三重奏
第6章 カノン
『ただいま。』
それにしても…いつからだったろう。僕が崇臣に、性悪だとか悪態をつくようになったのは。ここ最近じゃ、互いに衝突することも珍しくはなくなってきたけど…
『勇祐、お帰り。すぐ食べる?』
『うん。』
そもそも僕らは、似た者同士だった。背丈や見た目がどうって意味じゃなく。性格こそ違えど、趣味趣向がよく似ていたんだ。
幼稚園の頃。ほのりが越してくる以前より、僕らはよくつるんでいて。何の遊びをするのも、一緒。そうする内…特に、好きなものが同じということに気がついた。ヒーローや玩具、色、食べ物など…まるで図ったかのように、好みが全部同じだった。
『あのさ母さん…頼むから、飯にグリンピースは入れないでくれる?』
『あら。あんたまだ、そんな好き嫌いとかあったの?子供じゃあるまいし…よけるとかしないで、ちゃんと食べてよ?』
ちなみに…嫌いな食べ物も、昔からお揃いだ。
『そんなんだから、ウチの子は伸びなかったのねぇ…ほら、鵜川さんとこ。崇臣くんはスラ〜ッとして。ついこの間まで、ウチと変わらなかったはずなのに。』
…言っとくけど。崇臣こそ、未だにグリンピースはよけてるから。我慢して食うだけ、僕のがまだマシだからな。