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文句言いっこなしの三重奏
第6章 カノン
『ごちそうさま。』
とにかくそんな僕達が、同じ女の子を好きになるのは、至極当然なことで。
『あら勇祐、残してるじゃない。』
なまじ相手の気持ちが分かってしまう為、ほのりの取り合いは、長年苦戦を極めている。互いにあと一歩が、強く踏み込めないんだ。
『ちゃんと食べただろ、豆もどき。』
『もどき?いやぁね、グリンピースは豆でしょう。』
『いいや、あれは種だぞ。えんどうになる前の…いわば、豆のなりそこないだよ。だから、不味いんだ。』
例えばどちらかが、ほのりを彼女にできたとして。そうして均衡が崩れてしまうのが…たまらなく怖い。
『変な子ねぇ…まあ、ちゃんと食べてるんだからいいわよ、そっちは。そうじゃなくて、お母さんが言ったのはこっち、おひたし!丸々残ってるじゃないの!』
僕は崇臣との間に溝を作りたくないし、ほのりともそうだ。そして同じことを、おそらく崇臣も考えている。
『………いだってば。』
『ええ?』
だからこそ僕らには…
あのルールが、意味を成す。
『だから…嫌いなんだよ、茄子も!』
均衡を守りながら、ほのりと男女の関係でいられる。僕ら二人にとっては、実に手前勝手で、かつ、最も不自由な。そして…なくてはならないルールだ。