この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
文句言いっこなしの三重奏
第7章 和音
『そっか。確か、予選は8月の頭だっけ?』
『そうなの。だからね…たぶんこれから、帰りはもっと遅くなると思うんだ。』
中学の頃から、互いの部活にはよく応援に行き合っていたから…大体の仕組みは分かるつもりだ。毎年この時期は、吹奏楽部の練習がハードになる傾向も知っている。
『僕も総体が終わるまではバタバタするし…帰りを合わせるのは、難しくなりそうだね。』
コンクールの全国大会が行われるのは、10月半ば。東京都では、まず8月の予選を勝ち抜き、次に9月の都大会、そこから代表権を勝ち取った三校が、晴れて全国の舞台に立つことができる。
『しばらくは…崇臣の部屋にも行けないかもね。』
日も長くなってくるこれからの季節、練習時間が増えるのは、どこの部活だって同じだ。帰宅が遅くなれば当然…三人のルールが決行できる機会も減ってしまう。
『え?あ…う、うん…っ。崇くんと三人で………す、スル…のは、しばらく…』
“崇臣の部屋”という単語の意味に気づき、ほのりはみるみる頬を赤らめた。声は萎み、顔は俯き、無意味に手先を弄ったりして。そんな、モジモジ戸惑う仕草を見ていると…ふいに胸の辺りが、ウズッ…とした。