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文句言いっこなしの三重奏
第7章 和音
……とはいえここは、教室の後方出入り口。人目のつきすぎるこの場所でのイタズラには、いささか限界がある。僕はすぐに体を離し、ほのりの頭をポンと撫でた。
『大丈夫だよ、予選は8月だろ?まだ二ヶ月もあるんだから、今からそんなに思い詰めないで。練習すれば、ほのりだってもっと上手くなるよ。だからお互いに、部活頑張ろうな?』
『〜〜〜っ?!』
涙目で真っ赤なほのり。
を、笑顔で励ます僕。
どうかな?いかにも…部活で思い悩む幼馴染を、元気づけてあげた──って、そんな感じに見えるでしょ。
『ゆ…勇くんの意地悪っ!』
『はは。誰にも怪しまれなかっただろ?』
こっそりそんなやり取りをした所で、予鈴が鳴った。不満げに頬を膨らますほのりだったが、教室に戻る生徒が脇をすり抜けると、弾かれたように目元を拭い。そのまま逃げるようにして、自分のクラスへと走って行った。その後ろ姿が、二つ隣の教室に消えたのを見届けて。僕はもらった弁当箱をひっさげ、気分良く席に着いたのだった。