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文句言いっこなしの三重奏
第7章 和音
『源氏の君…光源氏の愛した女性は、数多くいる。まず初恋の相手、藤壺の宮。それから──』
この時代の男の日課といえば、意中の女性へラブレターを送ること。政もほどほどに、夜な夜な足しげく通うのは、やっぱり女の所で。所詮、一番尽力するのは夜伽という…分かりやすい男の性が、惜しげもなく なりけり調で描かれている。
『中でも格別の愛情を注いだのが、紫の上で──』
いくら格別の寵愛を受けたとて、女性達はそれぞれに共通の悩みを抱えていた。それは…男の浮気。
恋の病に床伏せることもあったらしい、この時代。女のあまりに暴走した想いは時に生き霊となり、憎き恋敵に取り憑き、挙句は呪い殺してしまうとか。
…男は単純だ。歳をとろうが、妻がいようが愛人がいようが、新たに愛らしい女を見つけると、簡単に恋に落ちてしまうのだから。対する女は、さも思慮深く、一途で我慢強いのだそう。一度や二度浮気されたって、想いは変わらず耐え忍び、ただひたすら根強い愛を貫いていく。それが、一層美しい……とでも、作者は言いたいのだろうか。
『反対に、それだけ多くの女性が惹かれるだけの魅力が、彼にはあったわけだな。それは──』
どんなに魅力があったって…正直、浮気三昧の男はどうなんだ?それに女も女だ。ことあるごとに受け身すぎる。例えば、浮気するなと何故言わないのか。言わないんじゃなく、言えないという方が正しいのかも知れないが…それでも、能動性に欠けることは確かであって。
どいつもこいつも結局は…
己の欲を、都合よく満たしたいだけじゃないか。