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文句言いっこなしの三重奏
第7章 和音
中とは、団体戦で弓を引く順番のこと。五人立の場合、頭から順に…大前(おおまえ)、二的(にてき)、中(なか)、落ち前(おちまえ)、落(おち)という呼び名が付いていて。つまり僕は、3番目に弓を引くということだ。
『何でってそりゃあ…お前、エースだもん。』
『は…?僕はそんなんじゃありません。それに、そもそも武道に、エースとかありません!』
もちろん誰がどの順番で弓を引こうが、競技では結果が全て。何番目が良いとか悪いとか、そんなのはないんだけど。ただ一般的に…奇数番目を担う選手は、それなりの実力が求められている。
団体の斬り込み隊長とも言うべき、一番手の大前は。とにかく度胸があり、それでいて中りの強い人が適している。一方、岡田先輩の務める落は、謂わゆる最後の砦。どんなプレッシャーにも強く、たとえ流れが悪くとも、ブレずにベストを尽くすことが出来る人…。おそらくここは、最も勝敗の要を担いやすく、かつ強靭な精神力がものを言うポジションだ。
そして、僕の務める中。大前と落の補佐にあたるこの役は、まず安定型の人を配置するのが定石と言える。つまり、プレッシャーに耐性のない僕には…この配役は、かなり荷が重いということ。そしてこの抜擢は、何より、岡田先輩の推薦があったからこそだった。
『ハハハそうだな…だからお前なんだ。』
一際ニッと口端を上げ…先輩は、わしわしっと頭を撫でてきた。