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文句言いっこなしの三重奏
第7章 和音
『英はさ、弓道に向いてるよな。』
落ち着いたと思ったら、また。先輩は、突拍子もないことを言ってくる。
『さあ…向いてるかどうかは、自分じゃよく分かりませんけど。』
『そうか。だけどちゃんと、才能あるよ。』
あまりにもサラッと言うので、思わず驚いた。
けど…
『…また冗談ですか。何度もやめて下さいよ、さすがにシラケます…』
その手には乗らない。もうパターンは読めているんだから。
『あ、スマン。そう気を悪くするな?こういう冗談は、俺言わねーから。』
こういうって?
冗談に種類でもあるのか。
『武道にエースはない。そういう考え方ができるのは、お前が持ってる才能の一つだよ。』
穏やかに笑った先輩は、そんなことを言った。