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文句言いっこなしの三重奏
第8章 メヌエット
『は?のほほん には、きいてないよ。』
感じ悪く突き放したのは、僕。
のりまきとか、のほほんとか、ほのりの名前すら覚えられてない、典型的おバカな子供。それが僕だった。
『だってねぇ…
それがいちばん、かわいいの。』
そして、天然のほのり。
突き放されたことなど全く気づかず、振りまく華やかな笑顔。
『へぇ…どこが、かわいいの?』
そこで柔和に応じた、笑顔の崇臣。
僕と違い、嫌味のカケラもないその社交的な態度こそ、人見知りのほのりを温かく受け止めた瞬間だったのかも知れない。
『うーんとね。ぴんくいろでね、ちいさくてね、わらってるからね、…かわいいの!』
ほのりの指差した絵。それは確かにピンク色で、陽気な笑顔が描き込まれている。が…
『は?これ?かわいいって、これのこと ゆってんの?でもこれって、うん…』
『あはは!そーだね、かわいーねー!
それよりさ、三人でゲームしよっか?』
…う○ちじゃん?!
そう言おうとした僕を遮って、崇臣は絵本を閉じた。サラッと話題まで変えていた辺り、今思えばさすがのフォローだ…。
この時見ていた絵本は、怪力を誇る、宇宙最強のメカ少女が主人公の物語。ギャグ要素が強く、手足の生えたう○ちなんかも描かれていたりして。…ほのりはまぁ、あれの正体を知らずに指差したんだろうけど。
とにかくこれが、僕達三人の交わした初めての会話、だったらしい。正直、僕自身そこまで昔の事は覚えていないのだけど。記憶力のいい崇臣が言っていたから、きっと間違いないだろう。