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文句言いっこなしの三重奏
第9章 休符
『いや。おれの情報だと…佐伯は女子トイレで、ほのの悪口を言ってたらしい。』
『は……女子トイレ?!何で崇が、そんなこと知ってるんだよ…?』
『たまたまクラスの女子が聞いてて、教えてもらったんだ。それに「今日の放課後、いつものように呼び出そう」って話していたって。…だから勇、今日おれらで後を尾けようぜ。』
聞きながら…ちょっとムッとした。
これでも僕は僕なりに、一生懸命ほのりを守ろうと気を張ってたつもりだった。それなのに…大事な情報はいつも、崇臣が仕入れてくるんだから。
教室で、廊下で、先生やクラスメイトのいる中で、不自然にならないよう誰かを見張るのは、すごく難しかった。半日中黙り込んでいる訳にもいかず、普段通り友達と話したり、遊んだりしながら。ただ意識の半分以上を、ほのりと佐伯に向けるよう心がけて。だけどやっぱり…そんな芸当、僕には全然上手く出来なくて。『今日のお前、何か変』と友達に何度も言われたりした。
なんだよ、自分は何もしないで…
隣クラスの癖にさ…
『…勇、どうした?』
『いや…分かった。じゃあ、放課後合流な。』
ほのりは僕が守る。そう、心に決めた。