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文句言いっこなしの三重奏
第10章 クレッシェンド
「え、あ…パ、パスッ!」
慌てたほのりは、すぐさまパスを出そうとした。縋るように味方を見やり、受け取ってくれそうな素振りの子を見つけると、そこに標準を合わせた。
「チャンスーー!小鈴さん!」
「シュート、シュート!」
「打てーー!」
だがその時、周りで観ていたクラスメイトの声援が耳に入り、咄嗟に踏み止まってしまう。パスが出ないと分かった相手チームのディフェンスは、猛烈に迫ってくる。体を捻り、ボールを庇うだけで精一杯のほのりには、もう何も考える余裕がなかった。
──このままじゃ獲られる…何とか、しなきゃ…!──
おそらく、体の反応の方が先だったろう。気づけばほのりはシュートを放っていた。
ピーーーーー!!
けたたましく鳴り響いた、試合終了の笛の音。直後、ガンッとゴールポストが揺れ、弾かれたボールは明後日の方向へと飛んで行った。
そうして、佐伯達のチームは惜しくも準優勝で授業を終えたという。