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文句言いっこなしの三重奏
第10章 クレッシェンド
崇臣が言ってた通り、ほのりはうんていが苦手だった。小柄なほのりにとって、うんていの棒は太くて掴みにくいからだ。それに、長い間ぶら下がっていられる腕力もない。ほのりより身長のある元木ユミコにしても、あの細腕では体力勝負は不利だと思う。
…結果、二人は負けてしまった。佐伯は罰ゲームと称し二人に全員分のランドセルを持たせ、帰路の間中、心ない言葉を浴びせ続けたという。
『そんな…
ほの、何で僕らに言わなかったんだよ?!』
どうして、ほのりがそんな理不尽な目に遭わなきゃいけない?!何で、ほのりは僕らに黙っていたんだ?!全然知らなかった…毎日側にいたのに……!
沸騰するお湯みたいに、ボコボコ怒りが湧き立って。ギュッと歯をくいしばると、切ったばかりの傷口から鉄の味が滲んだ。夢中で握りしめた拳が、左右で勝手に戦慄いて。伸びかけの爪が、強くめり込んだ。