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文句言いっこなしの三重奏
第10章 クレッシェンド
『元木さん…だよね?君はケガとかしてないの?』
ふと顔を上げた崇臣は、元木ユミコの手を取った。
『えっ?いやそんな、私は全然…っ辛いのは、ほのりちゃんだから…』
『……やっぱり。ほの程じゃないけど、傷になってる。ごめんね、女の子なのに…』
申し訳なさそうに呟くと、崇臣は元木ユミコの手を両手で柔らかく包み込んでいた。それはさっき、ほのりにしてやったのと同じようなやり方だ。
たぶん僕の知る限り、二人が話をしたのは今日が初めての事。それなのに、いきなり手を握るとか…そりゃあ元木ユミコはびっくりしたと思う。それが証拠にすっかり黙り込み、めちゃくちゃ真っ赤になっていた。
それからしばらく。日も落ち、辺りがうす暗くなってきた頃に、僕達は帰ることにした。ひとしきり泣いたほのりはどこか疲れていて、抜け殻のようにぼうっとしていた。
『ほの…暗くなってきたし、そろそろ帰ろう?ほら、こうやって手を繋いでさ…ほのの家に着くまで三人で。そしたら夜道も怖くないだろ?ほののお母さんに遅いって叱られるかも知れないけど…大丈夫だよ、僕らも一緒に叱られるから。だから、ね…立てる?』
コクンとゆっくり頷くのを見届けて、僕はほのりの手を引き立ち上がった。そばに置いていたほのりのランドセルを掴み、土を落として背負わせてやった。