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文句言いっこなしの三重奏
第10章 クレッシェンド


崇臣は依然、元木ユミコと話していた。
さすがに手はもう離していたけど。


『元木さんの家ってどの辺り?おれらと同じ方向?』

『あ、ううん。ウチは向こうなの。ここでいつも、ほのりちゃんとはお別れするから。』


脇で僕とほのりが立ち上がったのを感じ取り、元木ユミコも喋りながら倣う。隣の崇臣に遠慮してか、控えめにスカートを払い、そしてほのりの様子を気にしていた。一方の崇臣は、未だ石段に座ったまま、黙って神社前の分かれ道を眺めていた。


『…そう。で、ここから家までは遠いの?』

『え?ううん、そこの道を真っ直ぐ抜けたら、もうすぐなの。あとは角を二つ曲がって、信号を渡れば…』

『おい崇、そろそろ行くぞ。あんまり遅いと、さすがに僕らの母さんでも心配するだろ。早く帰ろうぜ。』




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