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文句言いっこなしの三重奏
第10章 クレッシェンド
『それじゃあほの、気をつけて。今日は全部話してくれてありがとな。これからのことは、また明日一緒に考えよう。…大丈夫、ここにいるみんなほのの味方だから。何も心配しないで、今日はゆっくり休むといいよ。
……じゃあ勇、後は頼むな。』
『え、ああ…うん。』
『バイバイ、ユミコちゃん。』
『バイバイ、ほのりちゃん。』
歩き出した二人を見送るほのりの横で、僕は妙な違和感に囚われていた。さっきの“夜道が危ないから送る”という最もらしい言い分。それがどうにも崇臣の本心とは思えなかったからだ。
(確かに…ほのは早く家に帰してやりたいし、元木を一人で帰すわけにもいかない。二手に分かれるのは自然な流れだったと思うけど…でも。何であいつ、進んで元木を選んだんだろう。)
特に深い意味はなかったのかも知れない。僕が先にほのりの手を握ったから、自分は元木の方をと思っただけかも知れない。…でも、何故だか嫌な予感がした。もしかして、わざと。わざと崇臣は、ほのりの手を取らなかったんじゃないか…と。