この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
文句言いっこなしの三重奏
第10章 クレッシェンド
『勇くん?』
『え、ああ…ほの、待たせてごめん。そろそろ行こっか…』
なんて。さすがに今のは妄想し過ぎだな。
さっきからどうかしてる、僕の頭は。完全にどうかしてるよ。
『……頼んだからな、勇!』
一度だけ振り返った崇臣は、念押しに大声を出した。僕も何か返事をしようと口を開きかけたが、あいつはもう前に向き直った後だった。そして心なしか早歩きになって、ずんずんと突き進んで行く。
それは消えるように。
呑み込まれるかのように。
不気味な夜の闇に入った崇臣の姿は、とうとう見えなくなった。