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文句言いっこなしの三重奏
第10章 クレッシェンド


『勇くん?』

『え、ああ…ほの、待たせてごめん。そろそろ行こっか…』


なんて。さすがに今のは妄想し過ぎだな。
さっきからどうかしてる、僕の頭は。完全にどうかしてるよ。


『……頼んだからな、勇!』


一度だけ振り返った崇臣は、念押しに大声を出した。僕も何か返事をしようと口を開きかけたが、あいつはもう前に向き直った後だった。そして心なしか早歩きになって、ずんずんと突き進んで行く。


それは消えるように。
呑み込まれるかのように。


不気味な夜の闇に入った崇臣の姿は、とうとう見えなくなった。




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