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文句言いっこなしの三重奏
第11章 対旋律
『…まだ六月に入ったばかりだろ。本当の夏は、もっと暑いよ。』
つられて見上げた空は、薄水色。うっすら飛行機雲を残す空は心なしか近くに見えて、どうにも六月には見えないし、照りつける日差しも強烈で、やはり六月には思えない。
『あはは。これ以上暑くなんのとか、しぬな、しぬ。マジでやべぇ、温暖化〜〜』
崇臣は両手を突き上げて伸びをした。口では文句ばかり言ってるが、いま機嫌がいいのは間違いない。さっきトイレで会った時とは、まるで違う顔つきをしてる。毒気のない、崇臣本来の笑顔だ。
『…お前な、ちゃんと作れよ。まじめな友達。』
『えー?アハハ、いんじゃんココに。あんなしょーもない女子の無茶振りなんか、適当に流しときゃ良いのに。それを真っ向から相手しそーだった、マジメ勇祐くん?』
にやっと細まった目元と、伸びてきた手。僕は、互いの間に置いていたコーラを素早くどけた。