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文句言いっこなしの三重奏
第2章 アンサンブル
『じゃあほのり、部活の後で。』
『うん、後でね。』
ほのりの教室前。開け放たれたスライド式の扉の傍ら、声をかける。
それぞれクラスの異なる僕達だけど、ほぼ毎日、三人一緒に下校している。部活終わりの時間帯は何かと物騒だし、そもそも家は近所だし。僕と崇臣で、ほのりを送り届けるのが日課となっている。
『……勇くん?』
『え?』
『どうかしたの?ぼーっとして…』
無意識に見つめていたのは、ほのりの唇。少し薄くて、淡いピンク色したきれいなそこは…キスをすると、驚くほど柔らかい。それに、しっとりと吸いつく感触が心地よくて、一度重ねると呼吸するのも惜しくなるほど。角度を変えて味わうのもいいし、不意をついて下唇を舐めるのも、震える反応が愛らしくて堪らないんだ。
そんな愛しい唇に…
さっきの崇臣とのキスシーンがチラついて──
「ほのりとヤッたぜ」
ああ…胃が痛くなる。
『勇くん?』
『…いや、何でもないよ。弁当ありがとうな。』
まともに目は見れず。僕は逃げるように手を挙げて、自分の教室へと戻った。