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文句言いっこなしの三重奏
第12章 ソナチネ
…それに昔から僕は、本当に単純で。
『そういえば、勇。新しいクラスで、ほのはちゃんと周りに馴染んでいけてるか?』
『ん?急になんだよ?』
『いや、一応…前にあーいうこともあったしさ。変なのに、またターゲットにされてたりしないかなって。』
崇臣のように周囲に気を配る器用さも、
物事の本質を見抜く力も、養われていなかった。
『大丈夫だろ、佐伯とはクラスが離れたし。それに、前のクラスでも仲良かった元木と一緒にいるからな。友達出来なくて悩んでる、とかもなさそうだ。』
『そっか。なら、良かったな。』
…子供だったんだ。
ただ目の前に見えることしか、信じてなくて。日常の中の、ほんの平和な部分しか自分は汲み取れていないんだってこと…この時の僕は気づいていなかった。