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文句言いっこなしの三重奏
第12章 ソナチネ
『待て…逃げんなよ!!』
『勇くんやめて!!』
走って逃げたあいつを追おうとしたら、ほのりが腰にしがみついてきた。
『なッ…離せよ、ほの!!』
『だめぇ!!』
『何でッ…だってあいつだろ?!あいつがほのを傷つけたんだろ?!その眼帯だって、全部…!』
『お願いだから誰にも言わないで!ひっく…勇くんは、何にもじないでぇ…うえぇ、うええーん』
ぐちゃぐちゃに泣き崩れたほのりは、それでも必死に僕を掴んでいた。巻きつく腕も、膝をついた足も、靴下も、スカートも…神社の湿り気を帯びた土のせいで泥だらけだった。
でも…頬だけは。止めどなく溢れる涙に、茜色の夕陽が反射して。それはまるで宝石みたいに、ほのりの頬で輝き続けていた。