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文句言いっこなしの三重奏
第12章 ソナチネ
ズルズルッと鼻水をすすり、制服の袖で目元を拭う。それから立ち上がって、ほのりの手を引っ張った。細道を抜け、いつもの通学路へ出ると、目の前が一気に眩しくなった。規則的に立ち並ぶ街灯の一つへ近づき、真下で止まる。そこでほのりの通学帽子を外すと、やっと顔をちゃんと見ることができた。
『ぐすっ…勇くん…?』
『ほの、目は痛い?』
ほとんど大丈夫だよと、ほのりは答えた。眼帯をしているものの、目自体に損傷があるわけではなく。実際の傷は目の上の擦り傷で、それももうほぼ治りかけていると。ただ、何よりもアザが派手に残っていて、それを隠すために眼帯はつけているのだと…そんな詳しい状態を、初めて聞いた。
『傷、見てもいい…?』
『え?う、んー…でも気持ち悪いよぅ?変な色だし、まだちょっと腫れてるし…』
『いい。見せて。』
『うん…』
街灯の下で見た傷は、想像よりもグロくはなくて。でもハッキリと、ほのりの痛みが見てとれた。