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文句言いっこなしの三重奏
第2章 アンサンブル
「やめて勇くん!!」
遠くで声がしていたような。
でも頭には、入ってきてなくて。
「お願いやめて!
あたし大丈夫だかっ…らああああ!」
土手の途中でつまずいたほのりは、殆ど滑りながら落ちてきた。僕らの側に倒れ、その第一声が「ケンカしないで!」だったから。あんまり必死なその姿に、迫力負けというか、気が抜けたというか…どうにかすんでのところで、僕の理性も呼び戻された。
「おい大丈夫か?!ケガは…っ、ほのり、足首捻ったりしてないか?!」
身を捩り、心配そうに声をかける崇臣を見下ろして。
…やっぱり、一発くらいは殴っておこうかって、正直思った。でも、一度解いた拳を、また振り上げる気にはなれなくて。開いたまま差し出して、ほのりの手を取った。
「えへへ…ありがとう。大丈夫だよぉ。」
起き上がり、パッパッとセーラー服をはたくほのり。長袖タイプの夏服だったお陰か、はたまた上手に転んだのか。本人が言うとおり、どうやら目立った外傷はなさそうだった。
“大丈夫”
確かに、そう言えるかも知れない。
…唯一、致命的な顔面を除いては。