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文句言いっこなしの三重奏
第2章 アンサンブル
「お前な…、いいかげんに…!」
「…勇くん。」
つん、と横から引かれたシャツに引き留められて。再度ヒートアップしかかった言葉が、喉奥に引っ込んだ。
「あ…あたし大丈夫だから。崇くんとキスするの、嫌じゃなかったから…」
遠慮がちに開かれた口からは、今にも消え入りそうな声。あんまり弱々しくて、僕は、思わず体ごと耳を傾けた。
崇臣はというと、僕の注意が逸れた隙をつき、その場から起き上がった。距離を取り、おまけにこちらへ背を向けて、少し孤立したような形で座り込んでいた。
「えっと、崇くんは悪くないの。その…あのね、何て言うか…」
もしかして、崇臣を庇ってるんだろうか…?全く、ほのりはどこまでお人好し…
いや、違うか。こんな激しい喧嘩はめったにしないから…僕らのこと、心配させてしまったのかな。
「…ほのり、ちょっと。」
僕は、ほのりと向かい合うように座り直した。…別にわざとじゃなかったが、そうすることで視界から崇臣が消え、ちょっとした二人だけの空間になった。あぐらをかく僕と、正座を崩した格好のほのり。左右それぞれの手を取って、軽く握って。準備ができたら、改めて声をかけた。