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文句言いっこなしの三重奏
第2章 アンサンブル
「深呼吸。…一緒にしてくれる?」
おもむろに息を吸って、吐く。初めはぽかんとしていたほのりも、次第に僕のリズムに合わせ肩を上下させた。とにかく落ち着こう。苛立つ自分を治めることが、何より先決かと僕は思った。
スー、ハー、スー、ハー…
そういえば、子供の頃。緊張しぃだったほのりを、よくこうやって落ち着かせたものだった。今は自分の為にしてることだけど、なんだか懐かしい。
それに、ほのりの手を握るってこと…
昔は簡単だったのに、今ではこんなにドキドキするんだな…
「ほのり…さっきは驚かせてごめん。もう、崇臣に暴力はしないから。心配させてごめんね。」
高ぶっていた崇臣への感情は、すっかり鎮火されて。むしろ、目の前にいるほのりが異様に近いことを今さら意識し出して、内心慌ててそんな事を言った。
「本当…?勇くん、もう怒ってない?」
「うん、怒ってないない。これのお陰で、落ち着いたからね。」
照れくさいのをごまかそうと、繋いだ手を持ち上げたら、ほのりの頬が少し赤らんだ気がした。