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文句言いっこなしの三重奏
第2章 アンサンブル


色づいた頬、はにかんだ口元と、柔らかな声も。目の前の全てが、嫌でも証明してくる。ほのりの放った言葉が、本心だということを。


「それでね、あたし…
勇くんに1つお願いがあって…」


左右のこめかみ辺りから、ジーンと痺れるような。はたまた両耳からボワ〜っと、大量の何かが抜け出ていくかのような。まるで例えようのない眩暈に、意識がぼやけて…


「………にも、…て欲しいの。」


近くで声はするのに、入ってこない。ほのりの顔も、いつのまにか見えなくなって…
おまけに口が酸っぱい。何これ…、胃液でも上がってきてんのか?顎の関節か、奥歯か知んないけど、キューってして気持ち悪い…
ああ、マジ…失恋て、こんなえげつない気分になるのかよ…


「……聞いてる、勇くん?」


ふと手元に力を感じて、ハッと顔を上げた。てか、顔を上げて初めて、自分がうな垂れていたことに気がついた。


「ごめん、何?もう一回言っ……」


言いながら、詰まった。だって、改めて見たほのりの顔が、驚くほどに様変わりしていたから。ほんのり桜色だったはずの頬も、さっきは普通だった耳も、首も…とにかく見える所全部、真っ赤に染まっていて。ついでに言えば、尋常じゃないほどの手汗が…


「ちょっ…どうした?!熱でもあるんじゃ…」

「……っ勇くん!!」


痛いほど握りしめられた両手と、てんで読めない状況と。遂には、続けて告げられた言葉に、僕の意識は丸ごと一気に吹っ飛ばされた。




















「勇くんのファーストキス…っ、
あたしが貰ってもいいですか…!!!」






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