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文句言いっこなしの三重奏
第2章 アンサンブル


──思えば昔から、
  どうにも敵わない口癖があって…


例えば、崇臣とかけっこをした時なんかに。


“どっちが勝ってた?”
“どっちがカッコ良かった?”


競い合う僕らに、ほのりは


“どっちも素敵!”
“どっちもダイスキ!”


いつも、甲乙をつけなかった。
そして…


“三人一緒が、あたしはダイスキ!”


とびきり笑って、そう言った。
幼馴染を想っての、その純粋な言葉は、だけど。ほのりを想う僕らにとっては、最も残酷な口癖でしかなくて。


不満を抱くことなんか、しょっちゅう。
“どっちも”じゃない、“どっちか”を選んで欲しいんだって。無理にでも順番をつけてくれって、何度も言いかけては、それも全て飲み込んだ。


“…うん、僕もこの三人がすきだよ”
“…まあね、それはおれもすきだよ”


そうすれば、今度はもっと輝く笑顔が待っていることを、ちゃんと分かっていたから。


…僕らが本当に敵わなかったのは、その笑顔。どうしても、ほのりの笑顔が好きで好きで仕方がなかった。




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