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文句言いっこなしの三重奏
第3章 前奏曲
『力不足って…そんな言葉で済ますつもりなの?英くんは、部を代表したメンバーだって、ちゃんと自覚はあるのよね?』
静かな原先輩の声に、場が凍りつく。
『分かってると思うけど、これは反省会なの。結果はどうであれ、きちんと今日の自分を振り返ることに意味があるはずよ。』
当然の指摘。
そもそも弓道には、矢を放った直後、自分の射を反省するという一連の流れがある。あくまで弓道は、己との戦い。常に自分を見つめ直し、よりよい射を目指していくものとされているんだ。
『今日の反省点は?』
『はい。集中…できていませんでした。』
『それは何故かしら。』
容赦ないつっこみに、胃がきしむ。
『…………』
僕が集中できなかった原因は、分かりきってる。ほのりと崇臣…今朝の二人とのやりとりが、ずっと頭に残っているからだ。
『黙るのは結構だけど、それはすぐに解決すること?明日には気持ちを入れ替えられるの?』
胃が痛い。
僕だって、こんな気持ちをズルズル引きずりたいわけじゃない。部活にもっと本腰を入れたい。でも…
『………分かりません。』
嘘でも『はい』と言えばいいものを。
煮え切らない僕の返答に、メンバーを包む空気は最低まで落ち込んだ。