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文句言いっこなしの三重奏
第3章 前奏曲
想像するに…正座でお説教とか、明日の練習メニュー追加とか、そんな仕打ちは最もな気がする。後は、いつも岡田先輩に向けてる厳しい眼差しの…10倍は冷たいやつを食らいそうだな…。道場の床と自分のつま先を見つめ、ぼんやりそんなことを思っていると…
『ぷっ…ふふ、なかなかひどい印象。でもそっか…私って、そんな風に見えるのね。』
頭上から聞こえた声は、すごく柔らかで…
『最上級生で、堅物で、怖くて話しかけにくい女?…全くいいとこないわよね?』
ふふっと陽気な声をこぼしたかと思うと、先輩はその場にしゃがみ、僕を覗き込んできた。
『ねえ?』
飛び込んできたのは、声と同じくらい柔らかな先輩の表情で。…まさか。あの原先輩が、笑ってかわしてくれるとか。小首を傾げて見上げてくるとか、なんすかその女子っぽい仕草は…とか。なんか色々と予想外すぎて、拍子抜けした…
『あーあ、傷つくなぁー?』
『…え?あ、いや、違いま…』
『違わないでしょ〜?確かに、さっき話しかけてきた時の英くん、顔が強張ってたもんね。今だってほら、苦手だって顔に書いてあるもの。』
ちょっとほんとに傷ついたみたいに笑った先輩を見て、ふと疑問が浮かんだ。先輩のこんな笑った顔…そもそも今まで、見たことがあっただろうか?