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文句言いっこなしの三重奏
第6章 カノン
『買い物っすか。』
『そうなの。お夕飯の支度してたら、うっかり切らしてるのに気がついて…。ほのりが帰ってくる前に済ませて、秘密にしておこうと思ったんだけどね。バレちゃったわね。』
『もぉ〜何それ…お母さんてば本当、抜けすぎなんだから…』
崇臣と立ち話をする母親に、ほのりは心底呆れた様子で溜息をついた。
『いや…うちの親でも、こんなのしょっちゅうやるよ?』
『そうだぞ、ほのり。醤油切らした位で、そんな言い方しなくても…』
『違うのぉ!うちのお母さんのは、トクベツだよ。うっかりなんてレベルじゃないんだからっ!昨日はマヨネーズ、一昨日はみりん…って、三日も連続で調味料を切らすなんて、聞いたことある?』
思わぬ熱弁に、僕らも驚いた。そうか、三日連続…さすがにそれは、うちでも聞いたことないな…
『アハハ!マジっすか、それ??!めっちゃ面白いじゃないっすか!明日は、何を切らしちゃうんすかね(笑)?』
『バッ…!カ臣、やめとけって…』
遅かった。僕が口を挟んだ時にはもう…彼女の頬には、赤みが差していた。
『んもう〜〜言わないでったら、ほのりちゃん!だから内緒にしたかったのにぃっ!』
少女のように恥ずかしがりながら、そんな風に溢した彼女を…僕らは全員で笑ってしまった。