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文句言いっこなしの三重奏
第6章 カノン
『もうお母さん…あのね、勇くん達は暇じゃないんだよぉ?』
『だって久しぶりなんだもの。いいじゃない、たまには!大きくなってからは、ウチに遊びに来ることもなくなっちゃったし…あ、でもあれね。こんな時間じゃ、勇祐くんちのお夕飯は、もう準備されてるかしら…?』
言いながら、胸の前で合わせていた両手が、握り込まれて。眉はハの字に、固唾を飲んで返事を待つ姿はまるで…お祈りでも捧げているかのようで。
『ははっ…たぶん、そうだと思います。』
親子って、本当によく似るんだな。
大きいほのりと話しているみたいだ。
『はぁ…そうよねぇ。残念だわぁ…』
『ほらぁ〜…あんまり変なこと言わないでよ。今日のお母さん、ちょっとはしゃぎすぎだよ?』
母親といると、ほのりの方がしっかりして見えるのも不思議なものだ。そして、娘からのツッコミを受けた彼女は、さらに元気をなくしたが…
『…あ!でも、崇臣くんは?!ご両親ともお仕事行かれてるわよね?今日もお帰り、遅いんじゃないの?!』
一握の希望を見つけたと言わんばかり。声を弾ませ、体ごと崇臣へ向き直った。
『…まあ。はい、そうっすね。』
『じゃあ!崇臣くんだけでも寄っていかない?!ウチの人は遅いし、三人でワイワイやりましょうよ!』
今度はお祈りというより、おねだりだな。さしずめしきりに尻尾を振って、散歩をねだる仔犬…とでも言うのか。とにかく、コロコロ変わる仕草がいちいち乙女じみていて…僕はまた、お腹が引きつってしまった。