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キセイジジツ
第6章 誤解
「やっぱ電源切ってんのか…」
真人は携帯を耳に強くあてたまま留守番サービスの音声を聴いている。
悠里と悠真は今朝、二人で出掛けると言って真人がシャワーを浴びてる間に祖母宅からいなくなっていた。
何となくコソコソされてる雰囲気を感じつつも、悠真はともかく悠里まで疑うのは兄としてどうなんだと思い留まり、気にしてないそぶりを見せた。
だがやはり気になるタチである真人は悠里と悠真に交互に何度か電話を掛けたのだが、二人共に電源を切っているようで繋がらない。
外出は当人の自由だし、いつもそばにはいられないのが普通なのだが悠里の事となると真人は冷静でいられなくなる。
ーーーりっちゃんのプレゼントを探すとか選ぶとか言ってたよな…そもそもりっちゃんの誕生日は近かったか?
選んで買うにしても…田舎に帰省中にわざわざ買うか?
いや、普通は買わねーよな…
思考を巡らせれば巡らすほど疑心は深まり、真人は貧乏揺すりを止められないでいる。
ーーーもしかしたら…都心では買えないようなものがこっちにあるのか?
別に置いていかれて寂しいとか嘘をつかれたかもしれないとショックを受けてるわけではない。
ーーーまさか……あの時みたいに……
何とも言えない不安が押し寄せては引いてを繰り返して真人を悩ませる。
「お前、何してんの?」
急に聞こえてきた声に反応して真人が顔を向けると元がすぐ隣にいた。
真人は朝食を済ませたあと秦家を訪れ、元がいる事は分かっていたが特に声をかけず、無言でリビングに入った。
そして我が家のように冷蔵庫からペットボトルを取り出してからソファーに堂々と座り、思考を巡らせていた。
そこに部屋から出てきた元が驚きながら声をかけてきたのだ。
「元兄さん」
「それ、俺のなんだけど?」
元がテーブルに置かれたペットボトルを指差しながら低い声を出す。
まだ開封こそしてないがそれは炭酸飲料で、普段からコーヒーを好んで飲む真人はいくら思考に気をとられていたからと言っても、間違えて取ってしまった自身に驚いた。
よく見れば見分けがつくように'元'と書かれたテープが貼られている。
「悪い…間違えた。まだ開けてないから」
そう言って元にペットボトルを渡す。
「開けてねーなら許す。で?」
元が蓋をひねりながら真人の隣に座り、唐突な問いかけを吐いた。