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キセイジジツ
第6章 誤解
食器の後片付けをササッと済ませて真人が使ってる部屋へ向かう。
「真人兄ちゃん」
中に向かって呼び掛けると襖が開いて真人が顔を出す。
「入れ」
真人はベットに腰を下ろす。
悠里といっしょに座布団が置かれた床に腰を下ろすと真人の目が俺を捉える。
「りっちゃんのプレゼントは見つけたのか?」
「いや、まだ…」
「りっちゃんの誕生日っていつなんだ?」
「8月18日だよ」
「そうか。じゃこれ渡しとくから口止めを頼んだお詫びに良いものを選んであげなさい」
そう言って一万円を渡してくる。
「えっいくらなんでも多いよ!」
「そうだよ…りっちゃん逆に気を遣っちゃうよ」
悠里と俺が断っても真人は諦めない。
「じゃ俺も含めて三人からのプレゼントって言えばいいだろ。それに全額使わなくても、余ったらお前達の小遣いにすればいいし」
「えっ…」
そのまま悠真のポケットにお金をねじ込む。
「俺もりっちゃんを祝ってあげたいんだ。でも選ぶのは苦手だからな。お前達に任せるから」
「うーん…」
「分かった」
悪くない話だと思った俺は真人の顔を見てうなずく。
「代わりに良いものを選ぶよ」
「頼んだ」
珍しく真人が優しげに笑う。
それも一瞬だけですぐに元通りの固い表情に戻る。
「話はそれだけだ。俺は風呂に入る」
まだ悠里は入浴してないのに真人は先に部屋を出て浴室へ行ってしまった。
「やっぱり変だ…」
「他には何も聞かれなかったしね」
悠里と俺は部屋から出て悠里の部屋に向かう。
部屋に入ると整理された荷物の中に見覚えのない袋があった。
「何か買ったの?」
俺が袋を指差しながら尋ねると悠里は頬を赤く染めながらその袋を開いて中身を取り出す。
「イヤリング。三つも買ってもらったの」
「へぇ~可愛いじゃん」
「でしょ~でも恥ずかしいような、もったいないような気持ちになっちゃって…今日たけちゃんに会う時につけて行けなかった…」
「それこそもったいないって」
「やっぱり?」
「うん。会う時じゃなくても風呂や寝る時以外ずっとつけといたら?」
「う、うん。そうしようかな…」
悠里は目を細めて微笑んで、恋する女の子の表情だ。
「健兄ちゃんもきっと喜ぶよ」
頭を撫でてあげると悠里がほんの少しだけ黙ったまま、不思議そうな表情をした。