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キセイジジツ
第6章 誤解
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「その男の子は……」
「ちょっと待て!」
真人が大きな声で俺の言葉を遮る。
「悠真、お前……まるで、その男の子から聞いたような話し方だが…」
「うん。その男の子から聞いた」
「誰なんだ?!」
「……まだ言えない。確証が持てるまでは」
俺の真っ直ぐな目を見つめた真人が小さく息を吐く。
「…分かった。話すよ」
「その女の子……悠里が見た夢は本当にあった事?」
「そうだ。確か悠里が5歳の頃だ」
「俺の記憶にないのは何で?」
「あの日はお前達が初めてケンカをしてな…」
「は?ケンカって…悠里と俺が?」
「あぁ、それで悠里がお前にケガをさせてな、母さんと父さんは悠里を叱ったあと、お前を病院に連れて行ったんだ」
「だから俺と真悠子、元兄、保兄、健の五人で泣きじゃくる悠里を慰めながら本堂の夏祭りに行ったんだが、事もあろうに悠里が迷子になった」
「まじか…」
「焦ったよ。二手に分かれて探して、悠里を最初に見つけたのは俺と元兄で、その時にはすでに男の子といっしょにいて悠里は笑ってた」
「すぐ駆け寄ろうとした時、男の子が悠里の頭や頬を撫でて『おおきくなって、またあえたら…けっこんしようね』って言ったんだ」
「また会えたら…」
「でもそのあとが驚いた。悠里が『けっこんする!』って大声で返事をしてな…挙げ句に指切りまでしてるし。俺はしばらく動けなかった」
「そんな俺の代わりに元兄が男の子のところまで行って悠里を俺のところへ連れてきてくれたんだ。だから俺は男の子の顔を知らない」
「なるほど」
「悠里と手を繋いで帰ろうとしたら俺達の数メートル後ろに健達もいて、その光景を見ていたらしい。もちろん俺同様に三人も男の子の顔を見てない」
「えっ…」
「それからは悠里の為を想って'五人だけの秘密'にする事にした。悠里がこの事を覚えていると必然的にお前にケガをさせた事を思い出させるかもしれないと考えてな」
「そんな…」
「幸いな事に悠里はその事を覚えてなかった。だからなるべく悠里に変な男が近付かないように俺が見張るようにした」
「そして悠里が中学生になった頃から健のクソ野郎があの時の男の子みたく悠里の頭や頬を撫でるようになってな。俺は焦ったけど、悠里は思い出さないから大丈夫だと健はその行動をやめなかった…」
真人が本当に嫌そうな表情をした。
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