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キセイジジツ
第7章 告白
「恭介さんはまだか…」
待ち合わせる為に秦家の前まで来ていた俺は携帯で時間を確認した。
約束の5分前で長田はまだ到着していない。
ーーー恭介さん驚くだろーな…
俺でも驚いたんだから恭介さんはその何倍も何十倍も驚くに違いない。でも……
どんな風に切り出すか昨日何度も考えていた俺は、これから訪れる展開をある程度想像しつつも、その後は想像出来ずにいた。
車のエンジン音が聞こえて俺はそちらへ目を向ける。
黒のセダンが目の前に停まり助手席側の窓が開くと長田が手を振った。
「悠真くんお待たせ。乗ってよ」
「はい」
言われるままに乗り込みシートベルトをかけて長田を見ると、前回会った時とは違う、そして普段からかけ離れた格好をしていた。
「今日は時間を作ってもらって…ありがとうございます」
「ん~昼くらいまでなら暇だし大丈夫だよ」
長田はふっと笑うと車を発進させた。
昨日連絡した時に昼過ぎから予定があると聞いていたが、その格好は予定と関係あるのだろうか。
感じたままの疑問を直球にぶつけてみる。
「恭介さん、どうしてその格好なんですか?」
「あぁ、これ?」
右折する為に対向車と歩行者に視線を移しながら長田は笑っている。
「俺ね、書道の先生なんだ」
「えっ…そうなんですか!」
「うん。で、教える時はこの格好してんの」
「なるほど」
俺は納得しながらもう一度長田を見て、言葉を続ける。
「それって袴って言うんですっけ?」
「そうそう、袴。ごめんねー驚いたでしょ」
「いえ、カッコイイです!」
「そう?何か照れるね」
長田は首の後ろを掻きながら笑う。
上下共に黒の袴を着た長田はとても凛としていて雰囲気がまるで違い、袴の良さなんて知らない俺でも素直に素敵だと思った。
「ホントは私服で来るつもりだったけど、会合が入ってね。一度着替えに戻るのは面倒だから着て来たんだ。つーわけで、俺のよく行く店でもいーかな?」
「あっはい。俺はどこでも」
「ふっ…聞いといて、もう向かってるけどね」
話に集中してて気づかなかったが、車は知らない道を走っていて、しばらくすると一軒の小さな喫茶店へと到着した。
「さ、着いたよ」
長田に続いて車から降り、入口へと足を進めると、準備中というプレートがかけられていたが、長田は気にせずに入口の扉を開いた。