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キセイジジツ
第7章 告白
「あつしー」
店内に入ると誰もいなくて、長田は厨房の方に声をかけていた。
そこに現れたのは俺も見覚えのある顔で、その人は長田を確認すると軽く笑う。
「何だ、恭介か」
「何だはねーだろ。店借りるわ」
「は?」
「俺一人じゃねーんだよ」
長田が親指で後ろの俺を差すと、その人は俺へ視線を移して止まり、口を開いた。
「あれ?健んとこの………悠真くんじゃね?」
「そうそう。お前記憶力やべーな!はははっ」
二人のやりとりを見ながら黙っていると長田が俺を見て笑いながらカウンターに座る。
「悠真くん、こいつ築地。一度会ってるよね」
「あ、はい。遊んでもらいました」
「覚えててくれたんだ?嬉しいなぁ~。あ、座って」
築地に促されて長田の隣に座る。
「何飲む?」
「俺コーヒー。悠真くんは?」
「俺もコーヒーでお願いします」
「了解」
そう言うと築地は一度厨房の方へ入って行った。
コーヒーを蒸らしながら淹れる香りがほのかに流れてきた。
「ここ、築地さんのお店なんですね」
「実家を継いだんだ、あいつ」
「すごいな…」
「あとは彼女作って結婚すればいーんだけどさ」
「彼女いないんですか?」
ーーー築地さんモテそうなのに…
「あいつ顔はいいからモテるんだけど、バカだからさ彼女に愛想つかされるタイプなんだよね」
「へぇ……」
どんな事をすれば愛想をつかされるのだろうと俺が考えていると、築地がコーヒーを持って厨房から出てきた。
「おい、誰がバカなんだよ」
「あ、聞こえた?」
「ばっちりな。つーか、俺が振られるのは最終的にお前や健のせいだろーが」
「は?何の事だか……」
ーーー恭介さんと健兄ちゃんのせい?
「恭介と健がいなかったら俺はモテるんだよ!なのに女は俺よりお前達に目移りしてさ……」
「いや、それは俺達のせいじゃねーし」
「ふんっ」
鼻で笑い築地は厨房へ消えていった。
「悠真くん、うるさくてごめんね。で、話って何だっけ?」
「大丈夫です。実は、この前恭介さんから聞いた話の事なんですけど…」
「あぁ、小さい頃の話?」
「そうです」
俺は一度、深呼吸をして自分を落ち着かせる。
「恭介さんは昔の事みたいに話してくれましたけど、まだその女の子の事、忘れられないんじゃないですか?」
「えっ…」
長田の顔から笑みが消えた。