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キセイジジツ
第7章 告白
「どーいう意味?」
無表情で長田は俺を見つめる。
「何となくなんですけど、恭介さんはその女の子が好きなんじゃないかと思って…」
「どーしてそう思うの?」
「その話をする恭介さんの表情がすごく切なげで、俺まで胸が痛みました…」
「……そっか……」
長田は目を逸らしてコーヒーを啜る。
俺は長田が何か言ってくるまで黙ってる事にした。
コーヒーを一口啜る。
ーーーコーヒー美味しいなぁ。
長田を横目で見ると片肘をつき、考え込むように手で口元を隠していた。
ーーー恭介さん素直になってよ…
厨房から顔を覗かせた築地が黙り込んだ俺達を見て、不思議そうに近寄ってきた。
「何?深刻な話してんの?」
手には自家製のチーズケーキを持っていて、俺達の前に置いてくれる。
「これウチのオススメなんだ。よかったら食べて」
「ありがとうございます」
甘い物に目がない俺はすぐに口に運ぶ。
「うわっ…うまいです!」
「おーそれはよかった」
築地は嬉しそうに口元を緩めて笑っている。
「悠真くん」
黙っていた長田がやっと口を開いた。
「ずっと考えないようにしてたけど、悠真くんの言う通り…俺あの子の事忘れられないし好きだよ。でも…」
コーヒーを見つめたままゆっくり声を出して、言葉を続ける。
「どこの誰かも分からない、名前も顔も覚えてない子を好きだなんて俺自身が認めたくなかったんだ……ははっ……」
口角を少し上げて自嘲的に笑う。
築地はそんな長田を黙って見つめていた。
ーーー築地さんはきっと、バカじゃない。
俺は長田を真っ直ぐに見つめる。
「俺、恭介さんの力になれると思います」
長田も俺を真っ直ぐに見つめ返す。
「……ど…ういう事…?」
「俺、その子の事知ってるんです」
ガタガタと音を立てて長田が椅子から立ち上がった。
「恭介さんから話を聞いたあと、同じ内容の話を聞いて……その子だと確信しました」
長田は目を見開いて口をわなわなと震わせている。
「その子はあまりにも幼くて当時の事は夢であった出来事だと思っていました。でも今頃、それは本当にあった事なんだと聞いてるはずです」
「だっ……れ……」
誰なのかと言いたいのだろう。
「その子は俺の……双子の姉です」
「っ…………」
長田は言葉を失っていた。