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キセイジジツ
第7章 告白
長い沈黙を破ったのは築地だった。
「えーっと、ちょっと待って………頭が混乱して上手く理解出来てないんだけど、その子…恭介の初恋の子が、悠真くんの双子のお姉ちゃんなの?」
「そうです」
「それじゃ……悠里ちゃんがその子って事?!」
「あ、悠里の事知ってるんですね。そうです、悠里がその子なんです」
築地は長田を一度見てから、俺に視線を戻す。
「何で悠里ちゃんだって思うの?」
「そうですよね、急にこんな事言われてもすぐに信じられませんよね。んー……じゃあ、悠里から聞いた通りに話しますね」
一息置いて俺は言葉を続ける。
「悠里には昔から夏の時期だけ見る夢があって、その夢の中では男の子に頭や頬を撫でられて、そのあと約束を交わすところでいつも夢は終わるんだそうです」
「約束?」
「悠里にはその男の子の顔が見えなくて、名前もよく聞こえないけど、その男の子と『おおきくなったら、けっこんしようね』って必ず約束してるみたいで」
「それって……」
長田が反応を見せる。
「ちゃんと指切りもしてるみたいですよ。それに……悠里の唇にはホクロがあります」
「そんな……」
「ここまで話が合うと、もう他人事ではないです。だから俺は恭介さんに事実を話すべきだと思ったんです」
長田はとうとう手で顔を隠していた。
「悠里には好きな人がいます。でも心のどこかでその夢の男の子を気にしてます。俺は双子だから悠里の気持ちがよく分かるんです……」
「悠里ちゃんの気持ち?」
築地が俺に尋ねる。
「悠里の好きな人への気持ちはたぶん'憧れ'が強いんだと思います。憧れを好きな気持ちといっしょにして自分を誤魔化してるようにしか見えなくて……悠里には言えないんですけど」
「なるほど…」
「だから恭介さんと再会する事で本当の気持ちに気づいてほしくて……こんな事言うと恭介さんを利用する感じに聞こえるかもしれませんけど、恭介さんにとっても悪い話ではないはずです」
「確かに…」
長田の代わりに築地が相づちをうつ。
「悠里には兄が話してるはずなんですけど、きっと恭介さんの名前までは教えてないと思うんです」
「えっ何で?」
「兄は悠里を溺愛してるので…悠里と恭介さんをわざわざ近づけるような真似はしないんです。だからこそ、恭介さんに動いて欲しいんです」