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キセイジジツ
第7章 告白
そこまで言うとやっと、長田が口を開いた。
「……動くって?」
「偶然を装うとか…いろいろ考えたんですけど、さっき恭介さんの仕事を聞いて、それしかないと思いました」
「俺の仕事って、書道?」
長田は首をかしげている。
「そうです、書道です。偶然にも悠里は書道をずっとしていて、なかなかの腕前です。それを使わない手はないと思います」
「書道してるのか…でも、どんな風に?」
「幸い、今は夏休みで俺達高校生は暇です。なのでどんな理由でも良いので、恭介さんの仕事場へ悠里を誘うんです」
「は?ちょっと待ってよ、悠真くん。俺は悠里ちゃんとは顔見知り程度の関係なんだよ?そんな得体の知れない男のとこに簡単に来てくれないでしょ…」
「それは俺に任せて下さい。悠里の事は分かってるつもりなんで」
俺は自信満々に笑って見せた。
「決行は早い方が良いです。恭介さん明日は暇ですか?」
「あぁ、暇だけど…」
「じゃ明日にしましょう!」
「えっまじで?!」
長田は目を見開いて俺を見つめる。
「嫌ですか?」
「いや、嫌じゃねーけど…」
「なら決まりです」
長田はまさかの展開に頭がついていかないのか、フォークでチーズケーキを何度も刺している。
「なぁ…悠真くん」
築地が俺を真っ直ぐ見ていた。
「どうしました?」
「その…さ、悠里ちゃんが好きなのって…健だろ?」
「……そうです」
「やっぱな……恭介は健の事も気にしねーといけねぇわけか。それ…きついな…」
長田もそれは十分承知なのだろう。
眉だけをピクッと震わせた。
「そうですね………きついと思います。だからこそ、一度悠里に会って恭介さんの気持ちを確認して欲しいんです。それで何とも思わなければ、恭介さんがあの男の子だって事も話さなくていいんですから」
「あぁ……」
「逆に悠里を好きだと思うなら、恭介さんの口から伝えて欲しいです。健兄ちゃんとの関係がどうなるか……俺でも分かりますけど、それでも向き合って欲しいです。……何か、偽善者みたいな事言ってすみません…」
俺は頭を下げた。
無茶な事を言ってるのも確かだから。
「頭を上げてよ」
長田の穏やかな声がする。
「俺も覚悟は決めるからさ。悠真くん、ありがとう」
顔を上げると少しスッキリとした表情の長田が、俺を優しく見つめていた。