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キセイジジツ
第7章 告白
ーーーちょっと緊張する…
秦家の前に到着した私は玄関のドアノブを握ったまま動きを止めている。
つい数十分前に元に電話で連絡をすると、例外なく家にいるとの事で、私の「話がある」という言葉にも声色を変える事なく訪問を了承してくれた。
ーーーだって、昔から夢だと思ってたのにそれが現実でしかも男の子も実在してるってさ……どこぞの少女マンガ的展開?!とか思っちゃうでしょ。
いまいちまだ信じられない私は自分を落ち着かせる為に深呼吸をする。
ーーー少女マンガ的展開ならその男の子はすっごいイケメンなはず!……ってやっぱ、ないだろうなぁ。
私は祖母宅を出発してから秦家に到着するまでの間、都合のいい妄想を繰り返しては自分を落ち着かせている。
ーーーいや…たけちゃん以上にイケメンな人なんてそうそういない……
胸の前で腕組みをしながら無言でうなずいていると、慣れ親しんだ声が聞こえてきた。
「悠里」
声をした方へ振り返ると家の中にいるはずの元が私の後方、秦家の門の横に立っていた。
口元を緩めて尋ねてきた元は、私の行動なんてお見通しと言うかのごとく、ふっと笑って言葉を続ける。
「妄想するなら家の中でしなさい」
「えっ!?」
ーーー見られてた?!
どこから見られていたのか分からない恥ずかしさと、それを黙って見ていたであろう元の行動に驚きながら私は両手を思いっきり振る。
「妄想なんて、してないしてない!」
「へぇー…まぁいいや。ほら、アイス買ってきたよ。いっしょ食べよ」
ーーーへ?アイス?
確かにコンビニの袋を手にしているけれど。
私の顔をじぃっと見つめたのは一瞬で、元は私の横なんて簡単に通りすぎて玄関のドアノブに手をかける。
扉を開きながら私を振り返って口を開く。
「ほら、入る。話あるんだろ?」
「あっうん」
私は促されるまま中へ入った。
それでもすぐに話にもっていける訳ではなく、私は元が淹れてくれたコーヒーとアイスを交互に口に運んでいる。
ーーー元兄ちゃん相変わらずだなぁ。
昔からアイスが大好きな元は一年365日、一日も欠かす事なくアイスを食べていて、そのお供となるのがコーヒーと決まっている。
もちろん、私もその組み合わせ。
ちらっと元を見やると、何とも言えない表情でアイスを食べれる幸せを噛みしめていた。